【〜龍指〜】

現在の世田谷代田付近で密やかに伝えられる『龍指(りゅうし)』

鹿島神宮から富士山の間に在るとされる「光脈筋」の伝説。

世田谷代田は、この光脈筋の上に存在していると伝えられ
旧くはこの地の高台から見える富士山頂には時折龍が現れたという。

〜龍の指切り〜

時は平安中期と伝えられているが、もっと前の時代かもしれない…

長引く日照り続きに際し、民衆が行なった雨乞いが通じて
日中の明るい時間にも関わらず、辺り一帯が真っ暗となり
勢い溢れんばかりに轟く雷鳴と共に姿を現した水神の龍が
富士山頂から一瞬にしてこの地に飛来して上空を覆った。

龍が天空を二周り三周り…と、ゆっくり旋回して雲を描き
今まさに大地に雨をもたらそうとした、その時…
日頃の「人々の都合が良い時ばかりの神頼み」が
遂に雷神の逆鱗に触れ、大地に向けて稲妻が放たれた。

ところが、それを察知したかのように龍のうねりから生じた突風により
雷神は体制を崩し、放たれた一条の稲妻の先端は龍の指に直撃した。

雷鳴と悲鳴が交錯するように響き渡る中、龍の指は切断されてしまった。

雄叫びのような音と共に、龍は竜巻きへと姿を変え
砂塵を撒き散らしながら光脈筋を辿るように舞い戻り
やがて富士山頂付近でその姿をくらませた。

その後、代田の地から龍を目撃した者はいない…。

切断された「龍指」は、御神体として祀られ
以来この地では、困った時にお願いするのではなく
供物と共に感謝の気持ちを報告しに詣でるようになったという。

感謝の気持ちを忘れない為の「ゆびきり(ちぎり)」が
雷神様と交わされたという御伽話であります。【記:月成】

〜想作裏話〜

「…とある地に古くから伝わる龍指」をモチーフに
「存在」的なアプローチで制作したオブジェ。

この「龍指」はテクタイトの素材を活かしたフォルムに
指の外(甲)側は、深い皺と浅い皺をコントラスト、
荒々しく隆起した独自のフォルムを描くように成形した。

内(平)側は、指で何かを掴む際の滑り止めを想定し
クレーターのような円形の凹みを全面に散らし
爪部のテクタイトに通じる隕石の衝突をイメージしている。

切断された指からは骨が見えるが、この骨部は象牙を
アスファルトで擦るという原始的な手段で成形し
傷口からは樹液のように溢れる銀色の龍血も…。

少々グロテスクな珍品である。

2006年秋:制作




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