『尚武』(象牙)
第34回「日本の象牙彫刻展」冨永 惣一賞 受賞作品

一風がドイツ剣術を始めて約1年が経過した時点での自らに捧ぐ...
今後の彫刻、剣術人生に対峙して自身への戒めが込められた作品。
戦国の世より蜻蛉は勝ち虫、オモダカは勝ち草と武家に尊ばれ
表側は蜻蛉のヤゴ、裏側は七宝オモダカ紋が配されている。
蜻蛉の幼虫であるヤゴを未熟な己と重ね合わせ
その目線は目指すべき上を向いている。

ヤゴは口に「己」という字形のアカムシを銜えているが
そのアカムシには己の弱き心が表わされている。
更に側面に彫り込まれた太陽と月の形から
「来る日も来る日も」と読み取ることが出来る。
つまり「来る日も来る日も、己の弱き心に勝ち続けよ」と解釈出来る。


一見シンプルかつ、渋い色調が意識されたその背景には
一風が実用を強調した新たな道を模索した痕跡がみられる。